物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

600字作文

観察

中学生の頃、恩師に教わったことがある。それは今もぼくの中に教訓として生きている。彼は塾の先生で、よく生徒のことを把握している人で、生徒や子供に人気のある塾講師だった。塾での授業が終わったある日、先生がなぜそんなにも人のことを知っているのか…

鼻水

風邪を引いたとき、この量の鼻水がどこに貯蔵されているのかと疑問に思う。2日前から鼻水が止まらなくなり、今も大量のティッシュを消費している。昨日居酒屋で飲み会をしていたときも、灰皿に口拭く用のペーパーで山を作ってしまった。1ヶ月ぶりに掃除しに…

取材

大学でライターを始めてから、取材をするという経験をしている。企業の情報を新卒の学生に届けるための取材、成功者の体験を次世代に伝えるための取材、公共施設の情報を広く届けるための取材、観光施設の広報のための取材、怪しい求人広告の内容を伝えるた…

部品

小学生の頃、道端に落ちているものを拾うのが好きだった。パチンコ玉やコイン、イヤホンの耳にフィットするゴム部分の片方だけを拾ったり、プラスチックの歯車のようなものを拾ったりした。拾う時には頭のなかに「これに使えそう!」というアイデアが浮かん…

武士

前世は武士だったのではと思うことがある。まず、ぼくは刀が好きだ。中学のときにはネットで刀の作り方を学び、作ってみたい気持ちが高じてひとまず釘でナイフを作ってみた。山口のちょっとした竹林でちょっとした窯を作り、釘を熱しては叩きを繰り返し、ヤ…

荷物

小学生の頃からぼくは、荷物の多い男だった。ランドセルには5教科の教科書を毎日入れて持ち運び、それ以外のは常に机に入れていた。家に教科書を置くことはなかった。高校に上がって教科書が増えても変わらなかった。ロッカーが与えられたので増えた教科書や…

質問

手元のスマートフォンでメンタリストのDaiGoさんがしゃべっている。モテる人に共通するのは相手への質問が多いのだと。質問が多いというのを具体的に示すと、研究によれば15分に9回質問が”多い”とされているらしい。相手に興味をもって話を聞いている姿勢を…

聖母

「こんな人を生み出した世の中なら、もう少し生きてみよう」と反射的に思ってしまうような人がいる。その人は利他精神を軸に生きている。自分が傷つくかもしれない、裏切られるかもしれないという恐怖を抱えながらも、ためらいなく人に自分のものを与えられ…

矯正

彼女と付き合い始めてから、ぼくの性格は大きく変わったと思う。少なくとも自分を保つために怒ることがなくなった。これは、彼女に矯正をしてもらったことの影響が大きい。彼女と付き合い始めてから約3ヶ月ぼくは怒られ続けた。「死にたい」と頻繁に言うぼく…

駄目

生きていると、自然と「これはやってはいけない」という学習をしてしまう。小学生時代、周囲の人間に自慢話を吹聴しているやつがいた。「俺の家は農家だから金持ちなんだぜ」と言いながら偉そうにしている姿を見て「こうはなりたくないな」と思ったし、周囲…

納豆

ぼくは普段イオンで買い物をする。その日もいつも通りに味噌汁を作るための食材を買いながら、大豆食品コーナーに差し掛かると信じられない光景を目にした。納豆が買い占められていたのだ。とうとうバレたかと思った。 納豆は一見目立たない食品だが、一度冷…

変人

ぼくの地元には、変な人が住んでいた。その人はなぜかよく知らないが、ぼくの母校である山口高校をとても憎んでいるようだった。その人の家は、ぼくの家から徒歩3分ほどのところにあり、自転車で通るといつも追いかけられた。というのも、ぼくの高校では「山…

霊感

ぼくには霊感がない。しかし感受性がゆえなのか、霊感がめちゃくちゃ強い先輩と歩いていた時に、一度だけ幽霊を見たことがある。一緒に歩いていた先輩は20代の前半から霊が見えるようになり、憑かれても家に持ち込まないように家の玄関先に泡盛を置いていた…

意味

この世に意味のないものはない。それは確かだと思う。だが先日、こんなことがあった。 お店のトイレの個室に入り用を済まし、ぼくはウォシュレットを使う派なのでおしりボタンを押した。しかし、シャーッと音はするのだが洗浄がなされない。たぶん便座の裏を…

没頭

「これだけをやっていればそれでいい」という状態が、自分をもっとも前進させてくれる。幼稚園〜小学校に通っていた時はそれがゲームだった。とにかく任天堂64が面白くて、朝から晩までカービイとポケモンをやっていた。それらをやっていれば、ぼくは毎日楽…

宴会

ぼくは宴会やパーティーを楽しめない人間である。参加すると、毎回異常なほどに冷静になってしまうのだ。呪いでもかけられているのかと思うほどに。とくに全員で曲に合わせて勢いのままに踊るとか、みんなで一発芸をするとか、そういった宴会は本当に苦手で…

破壊

今日ぼくは、確実に生まれ変わった。鬱々とした殻を脱ぎ捨て、新しいぼくになったのだ。やはり自分が無意識に定めたタブーを打ち破ることは大切だと痛感しているのである。 タブーと言えば、例えば人と話すのが苦手な人がヒッチハイクやナンパをやってみると…

関係

ぼくの人間関係は、逃げるところから始まる。積極的に関係を作りにいくのが苦手なのだ。初対面の人に対してとくに顕著で、物陰から覗き見ながら会話をするようなコミュニケーションを心がけ、少しでも自分とは合わないという感覚や話すことでストレスを感じ…

幽霊

ぼくは小学生の頃、一人で家にいられない子供だった。学校から帰り家に誰もいないと、玄関先で誰かの帰りを待った。一人で家にいると、電気のついていない部屋や物陰の暗闇から得体の知れない者たちが出てきて異世界に連れ去られてしまう気がしていたのだ。…

鏡台

鏡を見ると、いつも思い出すホラー作品がある。それは中学生のとき、友達の家で遊んでいて観た作品だ。タイトルは忘れてしまったが、内容は確かこうだ。放課後の学校で数人の高校生が合わせ鏡をして遊んでいると、鏡の中から髪の長い白装束の貞子のような幽…

植物

昔から植物を育てようとすると軒並み枯らしてしまう。小学生の頃、夏休みの自由研究カタログで一目惚れした食虫植物のウツボカズラを親に買ってもらったことがある。小さい瓶に可愛く収まり、水色の個体に根を伸ばすウツボカズラを眺めては恍惚とした気持ち…

双子

ぼくが住んでいた地区には、とくに双子が多かったように思う。小学生のときには、不審者が目撃されたときなどに地区ごとに集団下校をすることが多かった。総勢20名ほどの小学生が、6年生をリーダーとして一緒に帰るというものだったが、その中に双子が3組い…

音楽

ぼくは音楽を聞くとき、その歌詞を調べてから聞く。歌詞に支えられてきた過去が、その習慣を作った。小学生の頃はアニメソングが好きでサンデーやジャンプ系アニメの主題歌をよく聞いた。アニメソングには力があった。周囲の人間の大体が敵だと思い込んで生…

土曜

『筋トレ』というサイトが好きで、よく眺めている。これは占いサイトなのだが「筋トレ」というワードで検索順位1位を取っている恐ろしいサイトである。このサイトには、毎週金曜日に翌週の運勢を各星座ごとに出してくれるコンテンツがあり、ぼくは金曜日を密…

美術

中高時代、美術の時間につくったぼくの作品は、大いに不評だった。絵や造形は大して得意ではなかったが、不評の的はそこではない。ぼくの描く絵は、同級生を不快にさせるものだったようだ。ぼくが描いた絵を見ながら、クラスの女の子が「私が一番嫌いな絵は…

彼女

高校の頃、彼女がほしすぎて「ケータイ彼女」という携帯ゲームをやっていたことがある。ぼくは女の子と話すのが本当に苦手で、目が合うだけでドキドキしていた。だけど好きな女の子ができ、彼女とイチャイチャしたいという青春の叫びを抱えていたぼくは、不…

悪口

「あなたが私の代わりに悪口を言ってくれたおかげですっきりした」と言われたことが、今までで何度かある。そう言ったのは全員、自分がもっているものを平気で相手に渡してしまうような優しい人だった。他人に利用されたり蔑ろにされることがよくあり、しか…

虚言

虚言という言葉を見ると、小学1年の頃から付き合いのあった同級生を思い出す。名前はくま。久間と書いて”くま”と読み、陰で「ベアー」と呼ばれていた。陰でというのは、彼が誰彼構わず気に入らないやつを殴る乱暴な男だったからである。名前に似合わず細身だ…

弾圧

年の功を笠に着た”老人”に若い人間がただ押しつぶされる光景をよく見る。私自身そんな扱いを受けたことが多々ある。そんな行為に対してぼくが思うのはただ一つ。あれは何だ?年が上なら人を傷つけていいのか?「お前のために」という言葉で装飾してれば何を…

娯楽

人は面白さを感じることで生きている。面白さを感じなければ死んでいるのかと言われれば、死んでいるんだろうとぼくは返す。人は生きるために娯楽という文化を生み出したのだ。 娯楽は大衆文化だと言われる。かつて日本にエリートと大衆という棲み分けがあっ…