物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

600字文学

逃げ出した男

世の中には、見守られて育った大人とそうでない大人がいる。小さな広告代理店で働くその男は、見守られてこなかった方の大人だ。少なくとも本人はそう思っていた。それは見放されていたのかと言われればそうではない。なぜなら彼は自分を不幸だとは思ってい…

悲観性の男

ある町に、願えば何でも叶ってしまうほどの強運な男がいた。だが彼は、物心ついた頃からずっと悲観性だった。両親にも同級生にも道端の犬にさえも、嫌われ続けてきたから。嫌われる理由がわからなかった。ただ辛かった。もう終わりにしようと決意した男は、…

戻らないもの

大学3年に進学した山田は、ゲームに明け暮れる日々を過ごしている。毎日やっているのは、世界中のプレイヤーとつながり、話をしながらプレイできるオンラインゲームだ。面白くない授業に出て、楽しくないアルバイトに時間を費やすような、ただ時間を溶かすだ…