物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで18

今回は、『螢川・泥の河』の内容について。

 

文末に書かれた本の紹介を読んでから本文を読み返すとまた面白い、そんな文章だった。

 

『螢川・泥の河』は、又吉さん曰く「少年の成長と人間の生き様が刻まれている」らしい。

 

今回の紹介文の内容は、たしかに少年の成長と人間の生き様が刻まれている内容で、想像を膨らませて考える要素もあって面白かった。

 

又吉さんが少年だった頃、ヌンチャクを買って友達と遊んでいたことがあったそう。

 

それに飽きた頃、父親の同級生だった比嘉さんと、家族で同居することになった。

 

同居生活をしていたある日、比嘉さんが入っていると知らずにトイレを開けてしまったことがあり、「ワッサイビーン!」と言われた又吉さん。

 

怒られていると思っていたある日、普段物静かな比嘉さんが近所の神社でヌンチャクを振り回していた。

 

「子供にお尻を見られてフラストレーションが溜まっていたのか・・・」と解釈して申し訳なくなった又吉さんだったが、後日「ワッサイビーン」の意味を知って勘違いだったと知ったそうだ。

 

「ワッサイビーン」は「ごめんなさい」を意味する方言らしく、又吉さんは冗談っぽく「大きなお尻でごめん、だったのか?」と書いていた。

 

だが、トイレの鍵を閉め忘れて人に開けられてしまったとき、たいていの人は「すみません!」と言ってしまうのではないかと思う。

 

比嘉さんが思わず方言で言ってしまったのも、とっさに「鍵閉め忘れててごめんよ」と思ったからなのではなかろうか。

 

又吉さんは文末で比嘉さんに対して「やっぱり優しい人だったのだ」と書いていた。

 

後日ワッサイビーンの意味を知った又吉さんは、「トイレのドアを開けてしまったぼくに対して怒るのではなく、自分の非を謝る行為をとっさにやってしまう比嘉さんは優しい人だったんだな」と納得したのだと思う。

 

また、比嘉さんが熱心にヌンチャクを振り回していたことに対しては、言及されていなかった。

 

比嘉さんはもともとヌンチャクを扱う武術をしていたのかもしれないし、もしくは又吉さんの家でヌンチャクを発見し、又吉さんと仲良くなろうと思ってヌンチャクの練習をしていたのかもしれないなと思った。

 

文末で「優しい人だった」と書いていたため、後者なのかもしれない。

 

この文章を読んだあとに「人間の生き様」と書かれていたため、「半裸でヌンチャクを振り回す体の大きな比嘉さん」の姿を想像して笑ってしまった。

 

人の配慮や優しさを飲み込んで成長していく少年の姿と、同級生の子供と仲良くなるために努力する大人の姿が見える面白い文章だった。