物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

悪口

 「あなたが私の代わりに悪口を言ってくれたおかげですっきりした」と言われたことが、今までで何度かある。そう言ったのは全員、自分がもっているものを平気で相手に渡してしまうような優しい人だった。他人に利用されたり蔑ろにされることがよくあり、しかし蓄積された悲しみや苦しみを吐き出すのが苦手なのだと思った。ぼくは彼女らの話を聞きながら、その対象に向けた罵詈雑言を並べ立てた。それは天に唾を吐くものではなく、あくまで攻撃手段としての悪口だ。幼い頃から殺意と恨みをもって生きてきたので、人が何を大切にしていて、それをどう壊されたりけなされたりすると怒るかを考えてきた。だから人をコケにして怒らせるのは得意だ。

 ぼくは『泣き寝入り』という行為が嫌いだ。そして因果応報を軸に生きている。優しい人には誠実さと愛を返したいし、人を傷つけた人間にはそれ以上の苦しみを返してやりたい。世の中には人に傷つけられても、自分を責めて抱え込んでしまう優しい人がたくさんいて、そんな状況が許せないのだ。カスには社会的抹殺を。

 いつだったか「殺し屋になりたい」と人前で言ったことがある。今も同じようなことを考えているぼくの本質は、やはり真っ黒だ。あれがぼくの子供の頃からの夢なのかもしれない。ぼくが文字を打つのはいつか、デスノートを手に入れるためなのかもしれない。だがそれはもしかしたら、誰よりも愛について悩むことなのかもしれない。