又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで24
今回は『銃』の内容について。
又吉さんは小学生の頃、「落し物箱」のなかにある物品を物色するのが好きだったそうだ。
そこに並んだ片一方だけの靴下や体育シューズ、女子によって複雑に折られた手紙を見ていると、何かの答えらしきものや留めのない空想が溢れてきたという。
そんな思いに包まれながら、廊下の隅で1人ニヤニヤしていた少年だったそう。
ぼくも、落し物箱を眺めるのが好きだった。
彼と同じように、誰がどんな状況で落としたのかを想像するのも好きだったが、何より金目のものがあるかを探すのが好きだった。
たまに高級そうな腕時計などが入れられていて、それが売れれば何円になるだろうかと妄想するようながめつい子供だった。
物を値段で見てしまう子供ではあったが、一つだけ純粋に好きなものがあった。
ぼくは刀が好きだ。
中学生のとき、子供の夢を聞くローカルのテレビ取材があり、そこで「刀鍛冶の人間国宝になりたい」と言ったほど好きだ。
刃の美しさ、美徳や芸術という概念も含んだ形状、その存在感すべてが好きなのだ。
一時期、友達とともに鍛治の真似事をしてナイフを作ったこともある。
成長する過程で、好きな”物”に受ける影響はあると思う。
ぼくは刀のようになりたい。
不条理や理不尽を切り裂き、芯をもって自分の美を保ち続けるような、そんな存在に。
今回の『銃』という本は、ひょんなことから銃を手にしてしまった男の話だそうだ。
銃に魅せられながら、孤独感と緊張感に苛まれていく男の姿を描いた物語。
ぼくが刀をもつと、刀と話をするようになり、周囲の無機物を切り裂く衝動に駆られ続ける気がしているので、他人事ではないなと思った。