物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

諦念

 「自分にはできない」と諦めてきたことがある。人に好かれること、センスのいい人間になること、モテる男になること。中でも物語を作ることは、ちゃんと挑戦して諦めたことだった記憶がある。

 思春期の頃、小説を読むことで精神が救われた。だから自分も小説を書いてみようと思い、当時流行っていたモバゲーの小説書き場のようなサイトで書いていた。中学生の頃にどハマりして授業中も持ち歩いて読んでいたほど好きな小説があり、それを参考に書いていた。情景描写はよく書けていたように思う。モバゲー上で仲の良かったお姉さんのアバターの人もそんなことを言っていた。だがそのときの僕にとっては、面白い小説といえば一つだけだった。だから自分が書こうとしたときに、どうしてもその小説の物語と主人公のキャラクターに内容が引っ張られてしまう。だから肝心の中身が上手く書けなかった。魅力的なキャラ、キャラ同士のやりとり、物語の展開、それらがどうしても描けなかった。想像ができなかった。そしていつの間にか人の物語を消費するだけになった。

 いつも空想の世界の登場人物たちに助けられて生きてきた。自分も誰かにそう思ってもらえる物語を作りたいと思ったのを思い出した。自分が過去に諦めたことをよく見てみると、そこに自分が望むことがあるように思う。「できない」という事実を突きつけられた出来事ほど、自分を強く惹きつけるものはないのだから。