物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

鏡台

 鏡を見ると、いつも思い出すホラー作品がある。それは中学生のとき、友達の家で遊んでいて観た作品だ。タイトルは忘れてしまったが、内容は確かこうだ。放課後の学校で数人の高校生が合わせ鏡をして遊んでいると、鏡の中から髪の長い白装束の貞子のような幽霊が出てきて、その幽霊から命からがら逃げ惑う、というもの。これがあまりに怖すぎて、1回では観きれずに2回に分けた記憶がある。その作品でもっとも怖かったのが、鏡から幽霊がのそーっと出てくるのがアップで映し出されたシーンだ。あのシーンは今も思い出され、たまに目の前の鏡を割りたくなる。

 また先日、「お前は誰だ」と1時間鏡に向かって言い続けると精神崩壊するのか、という検証をする動画を観た。結果的に精神崩壊はしなかったが、その様子を映していた映像が怖かった。「お前は誰だ」と鏡に向かって指をさしながら言い続けている途中に、鏡の中の人物だけが一瞬、手を下ろして本人を睨みつけたのだ。明らかに本人と違う動きをしていた。虚像のあの目は、今思い返しても寒気がする。もしかしたら何か特殊な加工をしてそう見せていたのかもしれないが、ぼくはあれ以来、洗面所の鏡を剥ぎ取りたい衝動を抑えられない。

 だからぼくは、鏡が苦手だ。いつ鏡の中の自分が勝手に動き出すか知れたものではない。鏡の前に立つと「動くなよ」と反射的に念じてしまうが、いつまでもつか・・・。