物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

代行

 高校生の頃まで、暗い道を一人で歩くのが怖かった。夜道の物陰や暗闇から何が飛び出してくるか、なんてこと考えて鳥肌が立ってしまうほど怖がりだった。ちなみにその癖は今でも変わらない。

 中学時代、ある日の塾の帰り道。深夜0時頃、塾から家に歩いて帰っていた。塾からぼくの家に帰る道は二つあり、一つは大通りに面した明るく人通りの多い道。こちらは安心して帰ることができるが少し遠回りになる。もう一つは田んぼに囲まれた真っ暗で視界が360度ひらけている細道。もしも視界の先から口裂け女やテケテケなど、怪談話の登場人物たちが現れたらどうしようと考えながら歩いてしまうので通るのがとても怖かった。しかも全然音がしない通りなので、微かな物音にもでも恐怖を煽られてしまう。だが、こちらの方が早く家に着くのだ。なるべく急いで帰りたかったぼくはその日、意を決して暗く細い道を帰ることにした。

 だが道を歩いている途中、道の向こう側に青い光を灯した車があるのを見た。こんな細い道に車。しかも青い光。想像力が豊かだった中学生のぼくは、それが自分にしか見えない霊界の車なのではないかと考えた。となれば、隣を通ると車に引き込まれてしまう。すっかり怯えたぼくは、大通りを歩くことにした。

 後日、塾の先生にこの話をすると、代行の車だと教えてもらったが、大学に上がって実際に使うまで全然信じてなかった。