物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

晩酌

 家で一人、酒を飲む夜がある。1日頑張ったご褒美、というわけではなく、なんとなく今日は飲みたいなという日に、イオンでワインを選んで帰る。そんな晩酌が好きだ。

 別に酒が好きで飲むわけではない。酒は、気のおけない人たちと笑いながら飲むものとして好きなのだ。安い店で飲み放題の酒を飲むのもいい、ちょっと高い酒を吟味しながら選んで2人で飲むのなんて最高だ。そんな時間を過ごしていると、生きててよかったなと思う。月並みな大学生の言葉でいえば「これが人生だよな!」という感じだ。月並みな大学生のぼくは割とそれを言う。そんなぼくは緊張する席で酒を飲むと酔えない。だから初対面の相手とはなるべく酒を飲まないようにしている。

 晩酌をするときは、安いワインのなかからパッケージに惹かれるものを選ぶ。今までで一番好きだと思ったのは『SUNRISE』という名前の、南米風の太陽が描かれたものだ。ちょうどこれから頑張るぞと決意をした当時のぼくの背中を押してくれそう、という思いを勝手に乗せて買った。美味しかった。その一連の流れから「追い風が来てる」なんて思ったものだ。

 ぼくにとっての晩酌は、「力をもらう」的なニュアンスが強いのだと思う。特別に落ち込んだ時や頑張った時ではなく、何か頑張っていることが軌道に乗った時などに自然と酒を買って帰るのだ。そして酒を味わうのではなく、日常を酒と送って自分のまま過ごす。そんな夜がある。