物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

執事

 『大統領の執事の涙』という映画を観た。アパルトヘイトが存在するアフリカで、一人の黒人男性が白人階級の執事として生きていく話だ。物語は、黒人の主人公が自分の父親を殺した白人を憎むも、殺されないために仕える道を選ぶところから始まる。バカにされても受け流し、白人から知識と教養を学び、白人をもてなしながら生きる。そんな生き方を彼は選んだ。そんな彼にも家族ができ、家族を守るために仕える。息子に生き方を批難されながらも、彼は執事として、家族を守り続けた。

 ぼくは自分の好きな人たちが幸せであってほしいと思う。そのための手助けなら、何だってする。これは執事の生き方だと思った。

 ぼくはいつも、自分の好きな人たちに生かされてきた。彼らは興味を、愛を、知識と教養を、生きていくためのすべてをくれた。その人たちがいなければとうに自殺している。そして、これから出会う好きな人たちにも生かされていくのだ。そしてこれからも、それらを受け取りながら生きていく。だが何もないぼくには返すものがないので、せめて、その人たちが不幸にならないように動ける人間でありたいのだ。そのためにまず、マッサージを覚えた。

 ぼくが好きな人はいつも何かに追われて疲れている。そんな彼らが癒される時間を作りたいと思った。だけど彼らはよく気を使ってしまう人たちなので、マッサージを受けているときくらいは王様や女王様になった気でいてほしいものだ。