物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

憤怒

 幼少期にはよく、親をどのように殺そうかと考えていた。ぼくの親は過保護で支配欲が強く、子供が自分の言うことを聞かないとヒステリックに怒る人たちだ。自分の言うことを聞いていれば幸せに生きていけるのだと、自分たちの言うことが世界一正しいのだと信じ、それを押し付けてくる彼らの姿勢が嫌いだった。当時のぼくは幼いながらに、彼らの言うことを聞くと同じ人間になるのだと理解し、自分の命を盾に反抗した。気に入らないのなら殺せと言い続けた。結局殺されることはなかったが、彼らにとって自分は疎ましい存在なのだと解釈したぼくは、自分を生み出した彼らを恨んだ。常に何かに怒って生きている彼らを殺し、自分も死ねば幸せなのだと考え、惨たらしく殺す妄想をやめられなかった。

 その習慣が残ったまま成長すると、いつの間にか自分の中にも燃え続ける怒りが沸々と滾っていることに気づいた。なんだ、自分はやはりあの憎い両親と同じ人間なのかと悟ってしまった。今度はそんな自分を殺したくて何度も刺した。

 割と最近まで、怒りの感情に引きずられる被害妄想をすることが多かった。一度そのモードに入ってしまうとしばらく何もできなくなる。数時間、心の中で自分や誰かを刺し殺しているのだ。

 今でもたまに口が悪くなることがあるが、自分の中から怒りは消えた。大抵のことは笑って流せる。怒りを空っぽにして、それ以上の愛を注いでくれた彼女には感謝しかない。