物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

素直

 ぼくはよく素直だと言われる。そしてそれが君の良いところだ、とも。しかしながらぼくはずっと、そんな素直さが嫌いだった。

 小学校の頃、仲のよかった嘘つきに、よく騙されては馬鹿にされるということが多かった。「実はあの先生って・・・」という冗談を神妙な面持ちでもちかけてくる奴の話を信じて聞くと「嘘だよバーカ」と返されるのが常だった。たまに鬱陶しくなることもあったが、まぁそれはよかった。問題なのは、その性格のせいで人が言う冗談を冗談と理解できなかったことだ。

 冗談を理解できなかったせいで、自分で冗談を言うこともできなかった。それはなんだか自分が嘘をついているように思えたからだ。冗談を言った後、その行動を実行しようとしない自分に対して気持ち悪さを感じることが多かった。その性格のせいで面白みのある会話ができなくなった。会話がすべて連絡事項で成立しているような、そんな気がしていた。それは今も、用がなければLINEをしない特性に表れている。

 面接の場では、良くも悪くもありのまま全部言ってしまうあたりに素直さが見えるらしい。自分を良く見せることより、全部さらけ出して理解してもらうことを求めるようだ。まるで子供のような振る舞いと捉えられることもあるが、おかげで気のおけない関係ができた。それを無邪気だと、自分にはないものだと賞賛して面白がってくれるやつがこの世に存在していたことを含めて感謝している。