物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

才能

 突然だが、ぼくは運命というものを信じている。生きていく上で何かしらの選択をする際の葛藤や感情の揺れとは別に、大きなシナリオのようなものに導かれている気がしてならない。そのシナリオを辿るのに必要なのが直感で、辿っていくと人それぞれの役割や生きている意味に出会えるのではないかと思う。その過程で自然に身につける力を才能だと考える。自分の才能について考えてきた結果、ぼくは自分の素を、そして人の素をさらけだせることではないかという結論に至った。それに関して印象的な出来事がある。

 ぼくはある時、彼女をブチ切れさせた。当時のぼくは日常的に「死にたい」と言ってしまう人で、いつもはまぁまぁ言いながら聞いてくれる彼女がそのときは怒った。まったくひどい話で内容は忘れたのだが、彼女が怒りにまかせていろいろ言っていたのを覚えている。涙を流しながら怒っている彼女を見て、ぼくはそれが素晴らしいことだと直感してしまった。当時の彼女は普段、気を遣いすぎて自分を殺してしまう傾向があったからだ。彼女が自分の言葉を話している、と嬉しくなったぼくは、自分の立場を忘れて「それが聞きたかった!」と笑顔で言った。「お前のせいで怒ってんだよ!」と彼女はブチ切れた。

 後日、彼女にその話を聞くと「ぶん殴ってやろうかと思った」とのことだったが、そのおかげで自分の言いたいことを言えるようになったと言っていた。新しい考え方を知った、とも。