物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

少年

 帰省している。久々に見る山口は、変わっているところも多々あれば変わってないところも多く、忘れていたいろんなことを思い出す。通っていた塾の周りで煮干しをあげていた野良猫の汚さ、実家の隣がお好み焼き屋だったこと、通い慣れた図書館の居心地、親のありがたみと実家でのトラウマ。思い出したくない感情を思い出してしまうから、やはり実家に帰るべきではなかったと後悔してしまう。

 2年ぶりに両親の姿を見て、彼ら外見に老いを感じた。コミュニケーションにも変化があり、ぼくが話すことを受容する素振りがあったので以前より穏やかになったのを感じていた。だがそれは変化ではなく、コミュニケーションの取り方はあの頃と同じだった。酔っ払うと悲観的なことを言いながら出ていかないストレスを外に出そうとする父親。自分の考えが世界一正しいと信じて一般論を振りかざす母親。彼らは「お前は何もわかってない」という思い込みを根拠に、過ぎ去ったはずの怒りを込めながら延々と叱責の言葉を垂れ流す。その言葉たちが気力を削ぎ、生きるのが憂鬱だった少年時代に引き戻された。こうなると「私たちの息子なんだから何もできるわけがない」という毒を無条件に飲まされてしまう。これからは、その毒が効かない精神を作ろうと思う。

 両親のようになりたくないと思いながら生きた。帰省して話をしながら、ぼくは彼らと同じような人間になるルートを脱したことだけは実感した。