物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

性癖

 一見細いのに、座ると柔らかく形を変える太もも、だらしなさの中に引き締まった肉を見せる二の腕、はち切れそうなのを必死に耐えている下腹、そんなものにエロスを感じる。それらはギャップだ。ただの太もも、ただの二の腕、ただの下腹だと思っていたそれらが初見の印象を裏切り、より柔和で甘美な姿を見せている様にとんでもない良さを感じる。それは単に形状がどうとか肌の綺麗さがどうとか、そんな単純な話ではない。それは、すべての女体の中に美しさを見出していく旅である。

 ぼくは、人が一見して「美しくない」と言う何かが好きだ。そこに自分だけの美しさを見出せば、その美しさのすべてを一人で楽しむことができる。誰とも競争しなくていいし、誰にも奪われる心配がない。そんな平和の中で生きていたい。しかしながら一方でそれは誰にも共感されない感性でもある。「お前の”可愛い”は信用できない」と言われることがよくあるが、ぼくはそれでいい。それを聞くたびに自分は自分の感性をもっているのだと確認できる。それは時に孤独を感じることでもあるが、その分理解してくれる人が現れたときの喜びが大きいものだ。

 ギャップを見つけることは人の本当の姿を知ることでもある。いつも笑っている人のなかの寂しさや苦悩を、女性が好きな人にだけ見せる可憐な姿を、いつも怒っている人のなかにある孤独を見つけると、その人の素が見える。そんな瞬間をたまらなく愛している。