物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

背中

 映像制作をしている親友がいる。彼は高校時代、文化祭のCM大会で映像制作をしたことをきっかけに才能が開花し、大学時代はVJとして数々の箱を沸かせながら果ては武道館でVJをしたそうな。ぼくから見ると、彼は本当に自分の好きなことをやっているのだと思うし、彼もそう自負しているところがあるらしい。

 先日、帰省した際に、彼の実家を訪れた。そこに彼はいないのだが、彼のご両親と夕食をともにした。そこで彼がどれだけ素晴らしい人間かと、ぼくの視点から伝えてきたわけであるが、そのとき幼少期の彼について聞いてみた。なぜ、映像制作があれほどに好きなのかと。すると、彼の父親がこうおっしゃった。

 「昔、自分が映像を作っていて、作ったのをよく見せてた。そのときみんなで笑いながら見てたから、楽しかった感情が残ってるんだろうね。」

 子供の頃に見ていた父親が楽しそうだと、早めに自分のやりたいことが固まる子供が育つんだろうなと、その話を聞いて思った。ぼくが見てきた父親はずっと生きるのが辛そうだった。自分に置き換えたときに、その背中が見せる姿は子供の未来なのだと思う。

 別にそれが良い悪いという話ではない。ぼくは死にたい人生を歩んできて良かったと思っている。おかげで人の心を推し量る人間になれた。自分を好きになれた。

 父親の背中を見て、自分が何を感じ何を考えて何を選択するか。それが大事なのだと、子供ができたら伝えたい。