物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

物語

 自分の人生を、物語としてプレゼントしたいと思う。出会ってから死ぬまでのすべてを、心に残る小説のようにして。先に死んだら遺骨からダイヤモンドを作ってもらってそばに居続けるというような、死んでなお美しく続く物語として。

 生きる意味を探してきた。「お前は一人だ」とノートの端に書き込んだあの日から。それは本のなかにあるんじゃないかと思って本を読んだ。誰かのために強くなることがそれだと思った。体と心を鍛えた。しかし待っていたのはそれまで以上に自分を嫌いになる日々。笑うことと泣くことを、何かに怒っている自分が押さえつけ始めた。痛いと叫ぶ自分を無視していると、無感情のままその日を終えるようになった。腕を切って血を流し、生きていることを確かめた。環境のせいにして逃げたあとも、ぼくはぼくを必要としなかった。

 出会ってから、ぼくは2度裏切った。そんなぼくを必要としてくれた。自分が自分を裏切ってきたから、他人ならなおさら。どうせ裏切られるのなら、自分の都合だけを優先しようと思って裏切ったぼくを、呆れながらも許してくれた。ゴミクズのようだったぼくに、絶対になくならない居場所をくれた。そこで生きることが、ぼくの生きる意味になった。

 一度死んだから君のために命を使うというような、大層なことじゃない。先に誕生日のプレゼントをくれたお返しに、喜んでもらえるプレゼントをしたい。そんなとこです。