物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

遺伝

 今までは気づかないふりをしてきたが、認める。ぼくの行動は、けっこう母親に似ている。

 台風が来た日、ホームに食料やお菓子を持ち込んで友達と遊ぶ準備をしていた。滅多に休まない学校が休みになり、最接近の数時間前から凄まじく吹き荒れる外の風景を見ながら、せっかくの大型台風を楽しもうと数年ぶりに徹夜でゲームをしようと決めた。率先してゲームをセッティングし、持ち込んだ炊飯器でご飯を炊いて「ご飯が炊けたら卵と醤油があるから卵かけご飯にして食べ」と友達に声をかけ、2人分の味噌汁を作って「遠慮せんと飲み」と言いながら置き、お菓子を用意して「好きなだけ食べてええよ」と言って、気づいた。身の回りの世話を全部やってしまうその過保護な感じが母親に似ていた。

 もともと、やるべきことがあっても目の前で誰かが困っていたら、あっさり優先順位を変えてしまうところが自分っぽさだと感じていた。世話好きとは真反対の人間だと、自分を認識してきたが、やはりそうではなかったようだ。母親のようにはなるまいと思ってきたものの、無意識に真似るべきところは真似てきたみたいで、だからなのか、母親と仲直りして自分を素直に出せるようになったからなのか分からない。だけどそんな自分は嫌いじゃない。

 人に尽くすことで、何か見返りを求めているわけではない。ただ目の前の人がその時間を心地よく過ごせればそれでいい。母親もそんな気持ちなのだろうか。