物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

役割

 「この世のすべてのものには役割がある」という考え方が好きだ。水や植物は生き物の生命維持のためにあるとか、毛は体温を恒常的にするためにあるとか、そういうの。

 役に立たない人間は存在しないと思う。いるのは、自分を役に立てる方法を知らない自分と他人。「どこまでも役に立たないやつだ」と自分を恨み続けて、そんな自分が役に立つ方法を見つけた過程を経たからこそ、そう主張をしたい。

 物心ついた頃から、お金の心配で頭を悩ませ続けている親と過ごして「自分がいなくなればいい」と思った。友達だと思っていた人が離れていき、自分がいなくても世界は問題なく回ることを知った。自分がいなくなったところで誰も悲しまないだろう。そう信じて疑わなくなった。「俺は悲しいぞ」と言われても、嘘だとしか思えない。そんな慰めをいうなら証明してよと何度も言いそうになった。

 役に立つというのは、何かを必要としている誰かの問題を解決することだと、大学生になって学んだ。自動的にネガティブな妄想を何時間も繰り返すような大学生だったぼくは、そんな自分を見捨てないでいてくれた人のためにできることを探そうと思った。ゴミでしかない自分が持っているものなんてない。けれどその人が必要としているものは何か。そのために必要なものが何かを考えた。

 出した答えが正しかったのかはわからない。だが今も役割をもらえているのは、間違いじゃなかったからかもしれない。