物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

自立

 大学に入って親元を離れてから、自立するために努力した。きっかけは、自分がいなくなればいいと思ったこと。幼い頃から「お金がない」と言いながらため息をつく両親の姿を見て育ち、自分がいなくなれば彼らは幸せになんじゃないかと思い至った。親の目に映らない場所にきたからこそ、自立することで自分の存在ごとお金の心配を忘れてもらうことを望んだ。

 起業の勉強、ライティングのスキルの習得、一人旅、留学、インターン、福祉関係・飲食店、マッサージ屋など業種を問わずアルバイト、そして自分で靴みがき屋を始めてみたりと、自立につながりそうなことは何でもやった。でも、一人で延々と「何でこんなことやってるんだろう」と塞ぎ込む日が続いた。親に心配されない自分になれる気がしない。そんな思いがこびりついて取れなかった。

 親とは話すたびに喧嘩になるような仲なので会いたくはなかったが、先日、免許の更新で地元に帰らなくてはならず、数年ぶりに実家に帰った。喧嘩になりかけた場面もあったけれど、空いた時間が互いの考えを受け入れられる準備を整えさせてくれたようで。理解し合うことはできなかったけれど、和解することはできた。両親が自分を心配してくれているのは愛ゆえなのだとわかった。

 「心配なんてするなよ」と思っていたが、心配される余地を残して生きること。それが自立だと思った。