又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで①
ピースの又吉さんが過去に書いていた本の紹介文がまとめられている『第2図書係補佐』。
今回は、『尾崎放哉全句集』の内容についての考察です。
尾崎放哉という人は、「咳をしても一人」などの句で知られる自由律俳人である。
もともとエリート社員として周囲に期待された人だったが、家族も仕事も捨てて、最終的に小豆島で病死、という筋書きを生きた人らしい。
そんな彼の俳句を集めたのが、尾崎放哉全句集である。
又吉さんは、尾崎放哉全句集の紹介を第2図書係補佐の最初に置いている。
彼の人間性的に、自分の闇に居場所をくれた本として影響が大きかったのだろうか。
紹介というにはあまりにも短い文章で、彼は全句集をこう述べている。
そんな時に尾崎放哉の自由律俳句に出会った
咳をしても一人
墓の裏にまわる
あった、あったと思った。あいつらの居場所あったぞと思った。
あいつらというのは、又吉さんが小さい頃から暗い感情を書き連ねているノートに書かれた言葉たちのことだ。
その言葉たちに居場所をくれた本として、尾崎放哉全句集を紹介している。
闇をもつ自分、言葉を大事にし、昔から言葉を軸にした漫才を作ってきた自分を示した文章のオチに、言葉のためにしか生きられなかった人が著した暗い気持ちの行き場をもってくることで、当本に受けた感銘を淡々と、しかしその深さが伝わるように書いている。
同じく闇を抱える人間として、新しい言葉の読み方を教わった。