物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

工作

 ワクワクさんは、育ての親である。もしかしたら私世代のだいたいの人にとってはそうかもしれない。私の工作意欲は、彼に育てられた。

 私は小さい頃、よく手近なもので何かを作るのが好きだった。例えば、ノートのページを切って小さく厚い本を作ったり、液体のりを手に塗りたくり、手をこすって落ちた固まりかけののりのカスを集めて小さいオブジェを作ったりしていた。また、私の思想ゆえか、釘で剣山を作ったり、ティッシュを球状に丸めたものの全面に押しピンを貼り付けた鉄球を作ったりしていた。ワクワクさんには「そんな子に育つものを作ってみせていたつもりはない」と言われるはずだが、それでも私は彼に、何かを作る楽しさを教わり、工作意欲が育ったと思う。加えて、昔から作ったものを眺めている時間に幸せを感じる。小さい本も、のりのオブジェも、剣山も押しピン球も、よく授業中に手にとって眺めていた。作るという行為は私にとって、頭のなかにあるものが現実にできるかという挑戦、眺めるという行為は、それを成し遂げたのだと噛みしめる時間だったように思う。今まで作ってきたものは、どちらかといえば凶器のようなものが多かったが。

 今は、広報用の画像や記事、記事のための制作物などを作ることが多くなった。幼い頃、自分ではできないと思っていたことが作れないと割り切っていたものを作れるようになって嬉しく思う。純真無垢な悪に育たなくてよかった。