物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

読書

 私は他人の影響を受けやすい子供だった。「どうぶつの森がおもしろい」と聞けば親にどうぶつの森をねだり、「少年ジャンプがおもしろい」と聞けば、毎週コンビニで立ち読みをした。進学する大学を決める時も「琉球大学がいいぞ」と聞いて、琉球大学に行くために努力した。東大や京大といった上位の大学を目指すのが当然という校風に逆らい、琉球大学に第一志望で受かった初めての生徒になった。琉球大学を私に勧めてくれたのは、当時人類で一番好きだった塾の先生だった。もしかしたら、私は他人の影響を受けやすいというより、自分の好きな人のようになりたい人間なのかもしれない。

 私は中学生の頃、読みかけの小説を持ち歩く子供だった。人と話すより本を読み、空想の世界に浸っていたかった。いろんな小説を読んだ。その中で今も、私の心に住み続ける主人公がいる。彼は幼い頃に恋人を救えなかった弱い自分を責め、ただひたすらに強さを求め戦い続ける孤高の戦士だ。幼い私は、そんな姿に憧れた。誰かのために、血に塗れた道を歩み続けられる人になろうと思った。

 中学の頃、私は人を救えない無力さを痛感する経験をした。彼女はいつも私に優しくしてくれる友達だった。殺されたわけではないが、私は彼女の心の傷を拭えなかった。彼女にかける言葉が出てこなかった。私はたぶん、言葉を探している。世にある多くの文章の中から。あのときかけるべきだった言葉を。