又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで11
今回は、『エロ事師たち』の内容について。
この本のあらすじは、
ありとあらゆる享楽を提供する”エロ事師”を中心に、性を渇望する男達の物悲しく滑稽な姿がユーモラスに描かれている
というものだそうだ。
今回の文章には、又吉さんの回想の要素はなかった。
しかし『エロ事師たち』を渇望して渋谷を奔走する又吉さんの姿がユーモラスに描かれていた。
ただ、ぼくの読解力の弱さゆえか、この文章がどんな意図で書かれたのかがあまりわからなかった。
全体としては『エロ事師たち』の雰囲気になぞらえたものを想定して書かれたのだと思うが、本文中で彼は『エロ事師たち』を”虎”と表現している。
それは作者である野坂昭如の才能ゆえだが、文の最後にはこうも書かれている。
「渋谷の街に虎は放たれた」
ここでの虎は、『エロ事師たち』を置いていない書店に片っ端からクレームを入れると、『エロ事師たち』がない本屋は本屋ではないと言って回ると決意をした又吉さん自身を表現していると思われる。
では、それは何ゆえだろうか。
又吉さんの何をもって虎と表現したのか。
彼自身の才能を野坂氏と並べたのか、本への執着心を表現したのか。
もしくは、虎の意味は変わっていないのかもしれない。
彼がクレームを入れまくったあとのことを、入れたと仮定したあとのことを表現しているのかもしれないとも思った。
「渋谷の書店に『エロ事師たち』が入ったぞ」と。