物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで12

今回は、『親友歓交(『ヴィヨンの妻』より)』の内容について。

 

この文章には、太宰治への好きがふんだんに込められていた。

 

始まりは、太宰治の作品を好きになり、作家自身についても興味を抱くようになったというよくある話。共感を生む書き方。

 

それから太宰治と又吉さんの共通点についての”自意識過剰気味な”話がありまして、

太宰治は暗いから苦手」という人は多いけど、こういう愉快な一面があるんやでという締めくくりという構成。

 

この文章は、又吉さんの文才を実感として知っていると面白い。

 

又吉さんと太宰治との共通点についての経験談として、ファーストキスが太宰の命日と同じ日だったとか、高校卒業後に住んだアパートが、最後に太宰が住んだ場所と一致していたとか、実家がCMの撮影場所として使われて、観ると実家の表札が太宰に変わっていたというのがあった。

 

これらはそもそもが面白い経験ではあるけれど、ただの一般人が同じことを書いても「すごいね」で終わる話だと思う。

 

しかし又吉さんの文才を知って読むことで、何か運命めいたというか、現実的じゃないことを空想させてくれる面白さがあるのだ。

 

この話を読むと、又吉さんがどれだけ太宰治作品が好きかがわかる。