物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

娯楽

 人は面白さを感じることで生きている。面白さを感じなければ死んでいるのかと言われれば、死んでいるんだろうとぼくは返す。人は生きるために娯楽という文化を生み出したのだ。

 娯楽は大衆文化だと言われる。かつて日本にエリートと大衆という棲み分けがあった頃、仕事に勤しむ人間たちが、生活に楽しみを作るために生み出したものだ。映画やテレビ、野球、演劇や小説、近年だとマンガもそうだ。違う世界を感じられ、そこに浸れる世界観を提供してくれるものを人は手元に置き、暮らしてきた。生欲以外の余計な意識を持ってしまった人間にとって、ただ現実を生きるだけでは辛いのだ。だから現実から逃げながら、自分を騙して生きていく必要がある。夢を見て、その夢に浸って生きていけるのならそれがいい。立ち止まらずに生きていけるから。ツイッターのトレンドを引っ張っている人たちは、大半がそういう生き方をしているらしい。

 ぼくは自分の体が好調か不調かを「見ているものの中に面白さを感じるかどうか」で判断している。調子が良いときは、渋滞で目の前に割りこんできた車を見ても、その運転の上手さに思わず笑ってしまう。悪いときは好きなマンガを読んでも途中でつまらなくなって閉じてしまう。

 ぼくは生きるために自分や両親が死ぬ想像ばかりしてきた。それによって培われた想像力をもって、これからは面白いことを考えて生きたいと思う。今はそれを娯楽にする能力がほしい。