物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

美術

 中高時代、美術の時間につくったぼくの作品は、大いに不評だった。絵や造形は大して得意ではなかったが、不評の的はそこではない。ぼくの描く絵は、同級生を不快にさせるものだったようだ。ぼくが描いた絵を見ながら、クラスの女の子が「私が一番嫌いな絵はあれ」とヒソヒソ声で話していたのを聞いた。

 授業では様々な絵を描いたが、どれも悲しさと自己満足をまとっていたように思う。中でも一番印象に残っているのは「自己表現」というテーマで月に照らされる刀の絵を描いたときだ。当時のぼくは中学2年生だった。孤独がかっこいいという思考もあったかもしれない。だが確実にあったのは、誰にも自分が感じていることを理解できるはずがないという思いだった。そんな自身を刀で表し、感じている孤独さを月明かりで表した。刀と月以外は黒で塗りつぶした。それを見た先生は「そういうのもあるわよね」と言っていた。あの絵を否定せず制作物として受理してくれた先生は、少なくともぼくに一定の理解を示してくれていたのかもしれない。

 高校に上がると、「戦争」というテーマで絵を描いた。テーマは何でもよかったのだが、血が描きたくてぼくはこれを選んだ。そして路地で血を流し倒れる人々を描いた。みんな微妙な顔をしていたのを覚えている。学期末、その絵を改めて見ると気持ちが悪く、呪われているかのようだったのでちぎって土に埋めた。仮初めの呪いが供養されているといいが。