物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

双子

 ぼくが住んでいた地区には、とくに双子が多かったように思う。小学生のときには、不審者が目撃されたときなどに地区ごとに集団下校をすることが多かった。総勢20名ほどの小学生が、6年生をリーダーとして一緒に帰るというものだったが、その中に双子が3組いた。他の双子は一卵生で、うらやましく思っていたのを覚えている。授業中に入れ替わってもバレないし、2人が揃っているとそれだけで話題になる。何よりそっくりな双子だからこその絆があるようで、うらやましかった。

 ぼくは二卵性の双子だ。兄とは顔も性格もまったく違うが、年齢だけ同じ。せっかく双子という特別感のある生まれなのに、ただの兄弟のような境遇が嫌だった。特別感を存分に満喫できないのが嫌だった。何より、双子だからこその距離の近さがありながら、兄弟のようだから他の双子のように仲良くなりきれない複雑さが嫌だった。幼い頃兄が泣いていたら自分も自然と泣いていたように、テレパシーで会話をしてみたかった。

 大学進学で互いに地元を離れた今、双子だから感じそうな特別な信号はとくになければ、そもそも会話がない。中学3年の頃からほぼ会話がなかったので、実はあまり兄の人間性をよく知らない。スマブラが強いことしか知らない。だけど彼もひそかに文章を書く趣味をもっていたのをたまたま見つけて、自分でもわからない深いところで魂か何かがつながっているのかもしれないと思った。