物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

意味

 この世に意味のないものはない。それは確かだと思う。だが先日、こんなことがあった。

 お店のトイレの個室に入り用を済まし、ぼくはウォシュレットを使う派なのでおしりボタンを押した。しかし、シャーッと音はするのだが洗浄がなされない。たぶん便座の裏を洗浄しているのだろうと「前ボタン」を連打するのだが、まったく前に出てこない。永遠に便座の裏を綺麗にしている。こんなウォシュレットに果たして意味はあるのかと思った。

 ウォシュレットには、多大なる意味がある。あれは画期的な発明だ。紙で尻を拭く時間を短縮し、衛生を良く保つ。そしてちょっと気持ちいい。だからウォシュレットが存在することには大変素晴らしい意味がある。1000年先も姿を変えて残って欲しい技術のひとつだ。とはいえウォシュレットが尻の穴を洗浄しないのであれば、それはウォシュレットである意味がない。「ウォシュレットってそんなやつだったんだ。最低」と、冷めた女子高生の目をして見てしまう。

 存在する意味というのは、そのモノが本来もつ役割をまっとうすることによって生まれるものだと思うのだ。そして意味をなすから必要とされる。尻の穴を洗浄するからウォシュレットは必要なのだ。では、ぼくは果たして自分の役割をまっとうできているだろうか? そもそもぼくの役割とは何だろうか? 笑って見てしまったあのウォシュレットは、もしかしたら今のぼくの姿だったのかもしれない。