又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで34
今回は『リンダリンダラバーソール いかす!バンドブーム天国』の内容について。
文章のテーマは「夢をもったきっかけ」だった。
『ピース又吉』の原点は、中学2年の梅雨の頃、親友だと思っていた同級生に「お前に飽きた」と言われたことだったそうだ。
それからは彼に面白いと思われるために生きた。
その日々が高じて彼と一緒に漫才を始め、その時間が人生を変えた。
一緒に漫才をやっていた彼は、又吉さんを見下していて、借りたものは返さないという横暴な男だったという。
それでも又吉さんは彼が好きだった。
彼が失踪して家に探しに行き、家でたくさんの もちラーメンを見た時も、昔一緒に見た『河童』という映画のパッケージにアダルトビデオが入っているのをみたときも、やはり彼は面白いなと思った。
そんな彼とは7年前にコンビを解消し、彼は会社員になり、又吉さんはピースを結成して別々の道を歩いた。
7年ぶりに彼と酒を飲む機会があった。
そのときに彼がいった言葉が、嘘でも泣けるものだった。
「全然テレビ出てけぇへんやん? 面白いから、そろそろ出て来るって周りに言うてるんやけどなぁ」
夢を追っていると、近しい人との別れや再会、泣ける言葉、きっかけ、変わらない生活への不安、いろいろある。
その生活の最中に起こる、切なさとしっとりとした喜びが描かれた素敵な文章だと思った。