物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

武士

 前世は武士だったのではと思うことがある。まず、ぼくは刀が好きだ。中学のときにはネットで刀の作り方を学び、作ってみたい気持ちが高じてひとまず釘でナイフを作ってみた。山口のちょっとした竹林でちょっとした窯を作り、釘を熱しては叩きを繰り返し、ヤスリで研いだら紙を切れるくらいのちょっとしたナイフになった。自由研究に出したら評価はB。それでも好きで中学のときの将来の夢は刀鍛冶の人間国宝だった。高校で剣道部に入ると部室に模造刀が置いてあった。ぼくは毎日これで素振りをし、毎日刀身を眺めて恍惚とした。竹刀は常に持ち歩き、夜は横に置いて眠った。今は木刀に姿を変え、部屋に置いてある。

 次に、ぼくは忠誠心が強い。犬のようである。主人だと思う人に尽くすのを喜びだと感じるのだ。一人でいると自分の存在意義がわからなくなる。なぜ生きているのかと考えてしまう。ご主人様にマッサージをしているときとか、料理を作っているときとか、所持品の修繕をしているときが幸せである。

 それはもしかしたら育ち方によるものなのかもしれないし、前世は本当に武士だったのかもしれない。そういう意味で言えば、子供の頃から親のために何かしたい的な欲望が強かったように思う。わりと支配的に育てられたので、そのような生き方が染み付いてしまったのかもしれない。もしくは、前世は刀だったのかもしれないなとも思う。