物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

部品

 小学生の頃、道端に落ちているものを拾うのが好きだった。パチンコ玉やコイン、イヤホンの耳にフィットするゴム部分の片方だけを拾ったり、プラスチックの歯車のようなものを拾ったりした。拾う時には頭のなかに「これに使えそう!」というアイデアが浮かんでいるのだが、家に持って帰ると勉強机の引き出しに入れて忘れてしまう。そもそもアイデアを具現化するための他の部品がないので引き出しに入れておくしかないのだ。ちなみに何かを拾った時には、普段と違って玄関から真っ先に自分の部屋に入るので、すぐにバレて「汚いものを拾ってくるな」とよく両親に怒られた。あの頃のぼくにとってはどれも大事な部品で、彼らが汚いものだと表現する理由がわからなかった。

 たまに水晶のような綺麗な石を拾うこともあった。一時期、友達と水晶を探すために細かい石を庭に敷いている家にお邪魔したこともある。そのときは4時間くらい延々と探した。とても珍しいものを探すようなあのワクワク感は、そういえば今のぼくが無くしてしまった感覚だ。道端に落ちている何かの部品を見ても、水晶を見ても何も思わなくなってしまった。ぼくは大人になってしまったのだろうか。ぼくがこのまま親になれば、ぼくの両親と同じ発言をしてしまうだろう。今日から落ちてるもので何か作ってみようか。

 蛇足だが、下ばかり見て育ったぼくは落ちているお金を見つけるのがうまい。これを特技としよう。