物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

覚悟

 ぼくは何度か人を裏切った。インターン先で新しい仕事を任せてもらった時、彼女と付き合って2年目と3年目の時。その時々は、絶対に忘れてはならないと自分の心に刻み込んでいる。

 インターン先で任せてもらったのは、コーヒーの販売をする仕事だった。インターン先であるブランドのコーヒーを売る戦略を立て広めるというもの。今ではちゃんと価値を提供することが販売だという認識をしているが、当時は人に何かを売るという行為が悪いことに思えて仕方なかった。そしてぼくは、逃げた。

 また、彼女と付き合っているときは、他の女の子と付き合ってみたいという欲が出てきて抑えられなくなった。そしてぼくは彼女に別れを切り出し、逃げた。

 

 仕事から逃げたのは、自分が傷つきたくなかったからだ。人に物を売って嫌われるのが怖かった。彼女から逃げたのは、自分の価値を履き違えたからだ。もっと自分に合う女の子がいるのではとのぼせた。ぼくは自分の身勝手を恥じた。

 その後両者の慈悲によって戻らせていただき、信頼を取り戻すべく奮闘した。裏切られてなお「信じる」と言ってくださった彼らに、恩を返すと覚悟を決めた。覚悟とは、今いる場所で自分を信じてくれる人のために力を尽くすことだと学んだ。

 今は、どんなに辛くても仕事を投げ出そうとは思わない。彼女以外の女性をいいなと思うことがあっても、彼女を泣かせてまで得ようとは思わない。ぼくは、ここで生きるのだ。