物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

呪怨

 『死霊館』を観た。1900年代に起こった史上最大の悪魔事件を元にした映画だ。バスシーバという悪魔が取り憑いた家に越してきた家族の悲劇と、悪魔祓いを生業にしている夫妻の活躍を描いたストーリーは、実話だという点を鑑みると大変興味深い。現実離れしているけれど身近にもありそうな恐怖は、世界が広いことを教えてくれる。悪魔とは縁のない八百万の神の世界で生きてきたぼくには、悪魔が人を殺すという話が違う世界のことのように思えた。しかしながら、人が悪魔を生み出すという原理は理解ができる。

 映画のなかの悪魔は、その力か何かに取り憑かれた人間が生贄をもって生み出した存在だ。そこにあったのは憎しみや所有欲なのではないか。自分の大切なものを誰にも奪われぬよう、力を得ようとしたのかもしれない。その真意はわからないが、そこに負の感情があったことは確かだと思う。「呪いをかけてまで欲しいものなんてあるのか」なんて思いながら観ていたが、考えれば自分にもあった。

 怒鳴られることのない日常、安心して生きられる環境、笑って過ごせる時間。それらは両親を殺してでも欲しかった。それが自分には叶えられないことだと知ってからは、自分を殺して何もない平穏を得ようとした。結局どちらも実行せず生きてしまったが、抱えてきた思いは、呪いだったのだと思う。軽めの、けれど深刻な。だが進学とともに実家に残してきた呪いは、風化してきているようだ。