物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

終戦

 長きに渡る母親との戦争が終わった。それは、理解を求める戦いだった。その起こりは、母親の言動の不一致への不信感。「電気を消せ」と言い、ぼくたちが電気を消し忘れると怒鳴るわりに自分が消し忘れても笑っている。相手の立場に立って考えろというわりに、子供の立場を考えず自分の立場から一般論を押し付ける。言うことを聞け、それが正しいのだと言うわりに、”言うこと”通りにしてきた自分は随分と、不幸そうに溜息を垂れ流して生きている。その姿を見て、そうならないように生きてきた。

 ぼくはずっと自分を理解してほしかった。自分が何を考え、何を大事にし、どんな生き方をしたいのか。それを知って欲しかった。他ならぬ母親に。だが話せば毎回ケンカになるので、話すことをやめた。それは、破滅の呪いだった。

 いつのまにか解け始めていた呪いは今日、消え去った。お互い言いたいことを吐き出し、合意のもとに終戦が成立した。あの頃のぼくの悲願はここに成った。

 理解されるために生きてきた。その必要がなくなった今、気づいた。ぼくは自分の性癖や好みを大きな声で言いたい。人のそれらを聞きたい。語り合いたい。自分の存在価値を計る生き方は終わり、第1章は幕を閉じた。真の欲に即した生き方をしよう。まずはそうだ。『琉球の神話をもとに沖縄島を生み出すために必要な女性器の大きさを調べてみた』という記事を書こう。大声でエロを叫べる未来のために。