創作人の面白研究所分室

FunnyからInterestingまで、あらゆる"面白さ"を分析するブログ。何がどう面白いのか、なぜ面白いのかについて解説していきます。分室なので、たまに関係ないことも書きます。

虚言

 虚言という言葉を見ると、小学1年の頃から付き合いのあった同級生を思い出す。名前はくま。久間と書いて”くま”と読み、陰で「ベアー」と呼ばれていた。陰でというのは、彼が誰彼構わず気に入らないやつを殴る乱暴な男だったからである。名前に似合わず細身だったが、彼は「曲がりパンチ」という技を生み出し殴り続けた。気の弱い人間はよく彼の標的にされたものである。ぼくもよく殴られた。曲がりパンチはその後、ぼくらの学年で流行り中学に上がるまでいたるところで使われ続けた。

 また、彼は嘘つきだった。「母親がスクラッチで50万円当てた」とか「自分は政治家の息子」とか、自分を強く見せるための嘘をついた。なんだかんだで気が合い、一緒にいることが多かったぼくは、話を聞かされるたびにいつもの嘘かと流すようになり、高校に上がると付き合うのも馬鹿らしくなり疎遠になった。

 彼は嘘を体現したようなやつだった。生きるために嘘をついているのではないかと思わされるほどに。それほどの切実さが彼にはあった。自分を強く見せ、尊敬の眼差しを集め、自分はやはり正しいのだと答え合わせをすることで、自分を保っていたのだと思う。

 そんな彼は、高校3年のときに突然姿を消した。ヤクザに喧嘩を売ったとか家庭が崩壊したとか、いろいろな憶測が飛び交ったが、真相は誰も知らなかった。たまに地元で彼の目撃情報が挙がったが、どれも確証はなかった。

又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで21

今回は、『イニシエーション・ラブ』の内容について。

 

イニシエーション・ラブ』といえば、一昨年くらいに「最後の5分全てが覆る」というキャッチコピーとともに映画化されたので有名かと思います。

 

ぼくも映画館に観に行って、「覆ったわぁ〜」という感想を述べたような記憶があります。

 

「イニシエーション」というと「通例の〜」「ありきたりな〜」という意味ですが、あの映画はありきたりそうな2つのストーリーが、二階調化と左右反転の編集を施されてひっつけられたためにありきたりではなくなった、そんな映画だなと思いました。

 

今回書かれていた内容もなかなかない経験で、向こうから告白されて向こうに別れを切り出され、「タイミングが来るまで絶対待ってる」と言われた又吉さんの前を、別の男の自転車に乗った元カノが通り過ぎるというものでした。

 

なんとドラマティックというか、そんな辛い経験をまるでさっき体験したかのように書き出せる又吉さんはやはりすごいなと思いましたね。

 

何度もその場面を思い出したのだろうなぁという切ない気持ちになりました。

今さらながらスターウォーズを観たので感想を書いていく

こんにちは。

「面白い」をテーマにしたブログをしているのにスターウォーズを観たことがないのは絶対にダメだと思ったので観ました。

まずは4の『新たなる希望』です。

 

やはり名作と言われ世界中にファンがいるだけあってめちゃくちゃ面白いですね。

 

壮大な景色と緻密な舞台セット、多様な民族のキャラデザインと本当にしゃべっているかのような話し声、ハンソロの感じ悪さとそれでも期待を裏切らないキャラ、オビ=ワンとダース・ベイダーのだよね感、スカイウォーカーのあっさり感、どっちかといえば3POが主人公じゃね感、レイア姫の衣装のちょっと透けそう感と揺れてる感、よかったです。

 

宇宙空間という、本来一般人にとってもっとも遠い地理を、陳腐にするのではなく人間の生活が普通に存在していることで身近に感じさせ、なおかつ壮大さを感じさせる映像が最高でした。

 

ただ、タイタニックのあとに観てしまうと、クライマックスで「あれ?人間の命ってこんな軽かった?」という疑問をもってしまうので、人間の生き様とか命の大事さを問う系の映画とセットで観るのはおすすめしません。

 

もっと深い考察とか書きたいですが、それは全話観終わってからにします。

 

それでは。

弾圧

 年の功を笠に着た”老人”に若い人間がただ押しつぶされる光景をよく見る。私自身そんな扱いを受けたことが多々ある。そんな行為に対してぼくが思うのはただ一つ。あれは何だ?年が上なら人を傷つけていいのか?「お前のために」という言葉で装飾してれば何を言ってもいいのか?若い人間の心に傷を残して終わるだけなのに。そもそも人のためにする行動で本当に人のためになっているのは、マザーテレサレベルの献身があってこそだ。ただの自己満足を古い価値観でカモフラージュしたカスのような論理は鬱陶しい限りである。

 立場が上の人間が下の人間の思考を矯正して、自分の思考が正しいのだと確かめる行為は歴史のなかで往々にして行われている。魔女狩りユダヤ人やキリスト教徒の迫害。自分と考えの違う者たちを恐れ、乱暴に排除するというやり方を取って産んだのは何だったのかを忘れてはならない。そろそろ人間は許容を文化とすべきだ。多様性を受け入れていくべきなのだ。迫害や弾圧では同じことを繰り返すだけだと気づくべきなのだ。

 だが押しつぶす側の”老人”にも、そういう行為を取らざるを得ない事情があるのかもしれない。彼ら自身のコンプレックスや後悔ゆえなのかもしれない。だがどんな事情であれ、年上だからという理由で人を傷つけるようなやつは嫌いだ。年を取るという犬でもできることを自慢してひけらかすようなカスたちを反面教師として、ぼくは生きていく。

又吉直樹著『第2図書係補佐』を読んで20

今回は、『香水 ある人殺しの物語』の内容について。

 

先天的に異常に鼻が利く香水調合師の主人公がある匂いに魅せられて殺人を犯してしまうというのがこの本のあらすじだ。

 

この文章のテーマは鼻だった。

 

昔から異常に鼻血が出る又吉さんの体質。

 

道端で出会う同じ体質のおばちゃん。

 

幼き頃より鼻血を流し続けてきたもの同士。

 

おばちゃんは又吉さんの鼻腔に話しかける。

 

「我らの血が流れることで、救われる誰かがいる」

 

そう言ったおばさんの鼻腔のなかでは、残酷な戦場が広がっていた。

 

というフィクションが今回の文章だった。おもしろかった。

 

「嗅覚をテーマにした『香水』から匂い立つ香りにインスピレーションを受けて駄文をしたためてしまった」という一文があった。

 

自分もそんな文章を書いてみたいと思った。