騎士

　ぼくは漫画や小説の登場人物に影響を受けて性格ができてきたタイプだ。彼らの言葉を日常的に話しながら、自分の中に取り入れてきた。一番影響を受けたのは『レイン』という小説の主人公だ。小さい王国の騎士として王女を守るために戦い、その実、過去に大切な人を守れなかった自分の弱さを許すことができずに強く在り続ける選択をしただけという彼の生き方に憧れた。しかし初めて影響を受けたのは、ワンピースのサンジだと記憶している。

　「食べ物を残してはいけない」と思って生きてきた。サンジがそう言っていたからだと、いつだか父親に言った。ワンピースのキャラの中ではサンジよりゾロが好きだったが、この頃、性格がサンジに似ている自分に気づいた。そんな気がするのかそう在りたいのかはわからないが。だが、彼がもつ優しさ、騎士道精神、強さと女性への敬意は自分のなかにもあってほしいものだと思う。

　自分の意志で、人のために自分の時間や労力を使えることのすごさが、最近わかってきた。ジャンプの主人公たちがこぞって口にするその言葉の重さをようやく理解してきた。自分のために生きてきた自分に気づいたからだ。ぼくが使ってきた言葉は、どれも自分を守るための言葉だった。彼女と喧嘩した時も、人とのただの会話でも、自分を守っているだけの自分に気づきながら、目を背けてきたのだ。いい加減、自分を守るだけのコミュニケーションはやめようと思う。