物書きの物置き

物書きなので、物語を書いて並べます。

自信

 数年前、占い師がぼくに言った。「言ったことはやる」という言葉を胸に置いておけと。それはできなくてもいい。言葉を発した責任を果たすことが大事なのだと、彼は言っていた。

 面接という場において、ぼくは自分を売り込むのが苦手だと感じる。自分に自信がないからだ。自分を、自分の言葉を半信半疑に捉え「そうなればいいよね」という気持ちで発してきたぼくを、ぼくは信じきることができなくなってしまった。今まではその姿勢でなんとかなった。それで上手くいったこともある。これでいいのだと思い込み、深く考えることをやめ、その怠慢を『直感』という言葉に代えて、ごまかしながら生きてきた。いま胸を張って、自分を素晴らしい人間だと自信をもって紹介することができなくなってしまった。

 自信というのは、自分との約束を守り続けた先に生じるものだと思う。面接において、自信のなさは仕事をまっとうしてくれるか否かという視点で見透かされる。かつて契った約束をなかったことにしようとしたぼくが、そこにいた。

 この度、契約が更新された。62単位を1年半で取り切って大学を卒業する。これを破れば婚約は取り消し、親友との縁も切れる。逃れる術はない。ただ、言ったことをやるだけだ。そこまでの枷を背負って得るものが何かと聞かれると答えに困る。だが確実なのは、言ったことはやる奴だと胸を張って言える。ぼくがぼくを信じ切れるようになる。そんな気がするのだ。